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  桐山陶子

二月の初めに寿司割烹のお店で若鮎を頂きました。食むのをためらう程、正にいとけなき、うるはしき、やさしき姿でした。今月の 兼題「若鮎」にその時の春いっぱいのお味を思い出しました。

春の雨

若鮎の姿うるはし身を噛めり
春うらら花屋のカフェのチョコケーキ
一人には広すぎる部屋チューリップ
髪切りて少し華やぐ春の雨
春の卓色とりどりのタブレット
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  宮沢恵理

西播磨最南端にある綾部山梅林へ観梅に。満開の梅の花に囲まれて登って行けば、 新舞子浜の海岸、瀬戸内海の島々、淡路島が見渡せ、輝く菜の花畑が広がって いました。春の到来を感じた一日。

ヒヤシンス

麦踏の雲と別れて折り返す
蜆汁相槌いつも遅れがち
閏日のマニキュアに星つけたして
フォーク浮く食品サンプル鳥曇
ヒヤシンス録音さるる電話かな
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  石塚美智子

二月に他界いたしました姉は、学生の頃より俳句を嗜んでおりましたが、二十代後半に心の病に罹り、俳句から遠ざかってしまいました。棺に歳時記と俳句手帳を。今頃は彼岸で春の俳句を詠んでいるのではと思っております。

芽木光る

梅が香を風と睦みて旅立てり
老いてなほ未来ありけり芽木光る
清流のひかりに目覚め上り鮎
たをやかな遺影の姉と雛飾る
閏日のサイフォンの音に耳すませ
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  山本ゆうこ

野球観戦が大好きだった父。何度も足を運んだ甲子園球場の照明塔が見える病室で天寿を全うした。間もなく春のセンバツが開幕する。

家族写真

注射針拒む腕や浅き春
五百粁離れる故郷日永し
父母の鼾と寝言のどけしや
暮遅し家族写真のおどけ顔
閏日のぽつかり空きし父の席
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  角田智子

立て続けに二本の映画を観てきた。人生は思い通りにはいかないけれど光りだってある。私達はこの星で今宵も同じ空を見上げている。「夜明けのすべて」も「パーフェクトデイズ」も胸があたたかくなる映画だった。

ひかり

豆雛や仕覆の裂の真紅
遡る小鮎の弾くひかりかな
春の雪両掌に包む阿弥陀仏
春雨や昼には早き阿亀蕎麦
下戸なりに楽しむ酒場春の宵
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  和田始子

富山県氷見市を訪ねた。元旦の地震で大きな被害が出た漁師町である。町はまだ地震の爪痕を残していたが、1月下旬に再開した商業観光施設は、懸命に活気を取り戻そうとする笑顔と、支援しようとする笑顔で溢れていた。

漁師町

閏日や少し誤差ある砂時計
網引けば光を弾く白魚かな
食堂に列なす春の漁師町
魚屋のねぢり鉢巻き風光る
誰も彼も汽車に手を振るうららかな
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  釈 定子

(都合により欠詠いたします)







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  川口しのぶ

今年で3回目となるお遍路の準備を始めている。地図を開き、一日で歩ける距離の見当をつけ、宿の予約をしていく作業と、増えがちな持ち物をいかにコンパクトに出来るかと思案に暮れている。

陽炎

春泥を跳んで行きたるランドセル
うつらうつらと老僧の春衣
陽炎の坂抜けてくる人力車
カプセルの殻ある机春寒し
閏日に発つミステリーツアーバス
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2024.3.15更新